朝焼け

 

 

保護室の小さな窓から見える朝焼けが、

とても綺麗だった。

 

鍵のかかったこの部屋じゃ何もできなかった。

 

腰と手足に巻き付いた頑丈な拘束たい。

管を通って無意識に出ていく尿。

下剤を使って無理やり御襁褓に出す便。

 

声にならない声。

 

僕はただただ死にたかった。

 

恋人もいるのにどうしてと誰かは言うだろう。

 

それでも死にたかった。

 

漠然とした希死念慮が張り付いてとれない。

 

いろんな人に迷惑をかけた。

 

いっそのこと殺してほしかった。

 

首を吊った夜。

看護師さんは僕に尋ねた。

 

どうしてそんなに死にたいの?

 

僕にもわからなかった。

ただ涙がぽろぽろと流れた。

 

どうして自分がこんな感情になっているのか。

今もわからない。

 

それでも僕は生きている。

息をしている。

 

世界のどこかでは誰かが誰かを殺してる。

その被害者と代わってあげたいくらいだ。

 

僕はこの世界が大嫌いです。

 

でも、ほんの少しだけ見えたんです。

 

今にも消えそうな小さな光が。

暗闇にいるからこそ見える光。

 

大嫌いなこの世界と、

もう少し付き合っていこうと思う。

 

誰かみたいな勇気はないし、

誰かみたいな学歴もない。

 

誰かみたいに笑い飛ばせられないし、

誰かみたいに大声で泣くこともできない。

 

こんな僕が生きてていいのか。

正直まだわからないけど、

明日死ぬつもりなわけじゃない。

 

だからあの朝焼けみたいに綺麗じゃなくていい。

 

どんなに無様だろうと死に損なえよ。