特別

 

 

 

自分には他人とは違う、

特別な何かがあると真剣に思っていた。

 

中学時代にはいじめられて、

高校時代では精神科入院して、

就職しては数ヶ月で退職、

専門学校は中退して、

バイトの面接なんて何回落ちんやろうか。

 

現在に至る、

所謂障害者が働く作業所ですら、

毎日は行けてない僕だ。

 

これだけ波乱万丈な人生送ってんのやから、

才能のひとつやふたつあると思ってた。

 

甘えてた。

 

社会に。

自分に。

友達に。

 

絶対売れると思ってた。

 

そんな簡単じゃなかった。

 

年末に高校の友達との飲み会に誘われた。

行っていいのかわからず、

まだ返事ができていない。

 

自慢できることなんてなんにもない。

僕にはなにもない。

 

ぼろぼろになっていく左腕は、

いつになれば人前で出せるのだろう。

 

音楽が全てだった。

ギターが楽しかった。

 

もうどうでもいい。

 

正直、俺、自分は特別だと思ってたよ。

だって中1から作詞作曲やってんだぜ。

キャリアで言えばもうすぐ9年だろ。

そろそろ売れてもいいんじゃないの?

 

こんな暗い音楽聴かない。

わかるよ。わかってるよ。

 

でも、わかってくれる人が必ずいる。

もっとたくさんいるはずなんだ。

 

なんで売れないの?

 

CDを出さないから?

SNSが得意じゃないから?

性格が悪いから?

そもそもの方向性を間違えてるのか?

 

答えはすべて当てはまるんだろうな。

 

反抗的な態度で生きていける時代は去った。

 

中身なんてない耳障りのいい曲が売れるんだ。

適当なコードでそれっぼい歌詞で。

愛だの恋だの歌えば売れるんだろ。

別にディスってるわけじゃないよ。

 

ロックスターに憧れて、

いつかステージにとか思ってた。

 

辞めたいわけじゃない。

 

新曲もできてる。

やはり、また暗い音楽だけど。

 

結局、僕には才能なんてない。

 

なら、

実力で真っ向勝負してやろうじゃないか。

 

幾度となく否定されてきた、

持ち前の暗闇ミュージックで。

 

これが自分だ。

 

そう言える音楽をやろう。

 

売れるか売れないかじゃない。

というか、音楽始めた頃から、

そんなこと望んでなかっただろ。

 

天才じゃない僕が、

天才じゃない誰かに、

いや、天才じゃない君に、

届く音楽を響かせてやる。

 

少なくていい。

売れなくていい。

 

まだ精神的に安定していないのもあって、

現在はライブ活動できてないけど。

 

絶対戻ってくるからな。

 

待っててよ。

 

特別じゃない僕が、

生きてるだけで特別な君に、

最低な音楽を届けるから。

 

 

 

 

 

 

8月

 

 

8月になった。

家族と花火をした。

 

夏を謳歌しているのかは知らないが、

花火は楽しかった。

 

 

 

 

僕は人付き合いが苦手だ。

僕は他人と話す言葉選びが下手だ。

 

僕の頭のなかには、

もうひとつの世界が存在している。

その世界でだけ僕は僕でいられる。

でもいつまでもそこに浸っていては駄目だ。

 

 

退院して、学校もやめて、バイト先も潰れて。

 

絶賛ニートまっ最中。

 

親に迷惑かけたくない。

でもうまくいかない。

 

いくつかバイトを応募して面接も受けた。

今のところ見事に全て落ちた。

 

 

世の中って平等じゃないよな。

 

分かりきっていることを言うようだけど。

 

今あいつは何してるんだろう。 

むずいとか言いながら大学で勉強してるんだろうか。

怠いなとか言いながらバイトしてるんだろうか。

 

僕は何してるんだ。

 

自分で決めた進路すら突き進めない。

 

逃げてばかりだ。

 

いやなことから逃げて。

できないことから逃げて。

 

もう、なんか、苦しいよ。

 

どうすりゃいい。

 

生きてる価値とか意味とかもうどうだっていい。

だから、死にたいんじゃない。

 

消えたいだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝焼け

 

 

保護室の小さな窓から見える朝焼けが、

とても綺麗だった。

 

鍵のかかったこの部屋じゃ何もできなかった。

 

腰と手足に巻き付いた頑丈な拘束たい。

管を通って無意識に出ていく尿。

下剤を使って無理やり御襁褓に出す便。

 

声にならない声。

 

僕はただただ死にたかった。

 

恋人もいるのにどうしてと誰かは言うだろう。

 

それでも死にたかった。

 

漠然とした希死念慮が張り付いてとれない。

 

いろんな人に迷惑をかけた。

 

いっそのこと殺してほしかった。

 

首を吊った夜。

看護師さんは僕に尋ねた。

 

どうしてそんなに死にたいの?

 

僕にもわからなかった。

ただ涙がぽろぽろと流れた。

 

どうして自分がこんな感情になっているのか。

今もわからない。

 

それでも僕は生きている。

息をしている。

 

世界のどこかでは誰かが誰かを殺してる。

その被害者と代わってあげたいくらいだ。

 

僕はこの世界が大嫌いです。

 

でも、ほんの少しだけ見えたんです。

 

今にも消えそうな小さな光が。

暗闇にいるからこそ見える光。

 

大嫌いなこの世界と、

もう少し付き合っていこうと思う。

 

誰かみたいな勇気はないし、

誰かみたいな学歴もない。

 

誰かみたいに笑い飛ばせられないし、

誰かみたいに大声で泣くこともできない。

 

こんな僕が生きてていいのか。

正直まだわからないけど、

明日死ぬつもりなわけじゃない。

 

だからあの朝焼けみたいに綺麗じゃなくていい。

 

どんなに無様だろうと死に損なえよ。

 

 

 

叶うまで

 

先日、二十歳になりました。

お酒や煙草など楽しみもほどほどに。

 

正直、二十歳まで生きるなんて思ってなかった。

二十歳までに死ぬことが目標だった。

 

そんな僕が生きている。

 

バイトしたり、学校行ったり。

資格とったり、ライブしたり。

 

今の僕には大切な人が居ます。

だから、死に損ないのまま、

死にたいままを生きてみようと思う。

 

どうかもう少し見守っていてほしい。

 

いつか僕の死にたいが叶うまで。

それでも、僕は。

 

気がつけば二月が終わっていた。

 

 

久しぶりにライブをした。

コンピに選ばれて参加した。

バイトをはじめた。

 

二月は僕にとってリスタートの月だった。

 

 

正直、諦めてた。

音楽とか人生とか。

 

首の皮一枚でこの世界と繋がっている。

 

夜は眠れないし、昼は眠い。

夕方ごろ動き出す生活。

堕落した生活。

 

少しでもメリハリをつけねばと始めたバイト。

馴れないことまみれで悔しい日々。

ストレスで食事が喉を通らない。

 

 

少し話を変えよう。

 

この前、久しぶりにライブをした。

そこでの出来事。

僕のライブをみて涙を流していた人が居た。

届く人には届くんだって感動した。

配信のアーカイブを何回もみてくれる人も居る。

 

僕の人生はくだらないものかもしれない。

でも、誰かの心を動かすことができる。

 

僕は音楽が好きだ。

なんて言えないのかもしれない。

だって休みの日はギターも触らず寝てるじゃないか。

 

それでも、僕は。

 

 

 

うさぎとかめ

 

 

うさぎとかめで言うと、

僕はどちらかと言えば、

うさぎのほうだと思う。

 

人並みにこなして、

それなりにやってきた。

 

でもプツンと何かが切れたとき。

僕は立ち止まってしまう。

 

僕の中のうさぎは、

休んで止まってるわけではない。

 

走ってるのが苦しくて、

でもそれに自分では気付けなくて、

気が付いたら倒れてた。

そんな感じ。

 

かめは利口で、

ゆっくりだけど確実に、

自分のペースを崩さない。

 

僕はかめになりたかった。

無いものねだりだろうけど。

 

 

リスナー

 

 

吐き散らした声と、
ばらまいた音を繋いで、
ひとつの音楽になることは奇跡だ。

 

当たり前だよ。


って君は笑うかな。


暗い奴はいらない。


って誰かは言うけど、
もうそれはそれでいいと思う。

 

好かれるためじゃなくて、
嫌われる覚悟でやってる。

 

笑えない冗談を交えて話した、

10数年の出来事を軽々しく扱うには、
まだ難しいから音楽に。

本当はたぶん自分に聴かせたいだけ。

 

いつだってそうだ。

 

誰もうたってくれないから、

僕はうたう。

 

死にたい。消えたい。

眠りたい。苦しい。辛い。

全部嘘偽りなくうたうよ。

 

僕は僕の曲が聴きたい。

 

その延長線上にあなたがいてくれたら。

これほど嬉しいことはないよな。

 

ありがとう。